ガン軟部外科手術
甲状腺機能亢進症の手術
甲状腺機能亢進症は、年を取った猫がかかることのある病気で、一般的には内服薬でコントロールできます。
症状は、よくご飯を食べて元気そうだけど激やせしてきた、下痢と便秘を繰り返す、毛につやがなくなり束になってごわごわしている、元気に動くがすぐ疲れてしまう、心臓に雑音がある、肝臓の数値が異常に高い、などなどがあります。
ここでご紹介するノラさんは、14歳になったときに甲状腺機能亢進症がわかりました。はじめ内服薬で治療を行いましたが、甲状腺の薬、心臓の薬、血栓ができなくするための薬、肝臓の薬と計6種類もの薬を朝晩で飲んでも、病気をコントロールすることができませんでした。
私のところに来たのは、内分泌疾患の権威で有名な「まつき動物病院」からの紹介で、外科治療をすすめられたのがきっかけです。
手術前のノラさんは14歳9か月、手術をするには高齢の部類に入ります。体重は4.55㎏でガリガリに痩せている状態で、食欲もほどんどありませんでした。心臓機能も落ちており手術はぎりぎりと判断しましたが、ふつうは5㎜ほどの幅しかない甲状腺が親指ほどの大きさに腫大したしていることが原因となっているのは明らかでしたので、オーナー様とご相談して手術となりました。
手術は無事に終わり、翌日には食欲も回復、翌々日には測定値がオーバーしていた甲状腺の数値も正常に戻りました。摘出した甲状腺は「甲状腺腺腫」良性の腫瘍ですが甲状腺ホルモンをたくさん分泌し、甲状腺機能亢進症を引き起こします。
あれから2年の月日が経ち、ノラさんは今16歳9か月。あの日のご縁もあり、今では新しいいりえ動物病院に定期検診に来てくれています。
お互い2年分年を取りましたが、ノラさんはふっくらして相変わらずの貫禄。甲状腺の数値は安定しており、あんなにたくさん飲んでいた薬も、今は一つも飲まずにゆったりと毎日を過ごしています。
いりえ動物病院では、月に1~2症例の甲状腺摘出手術をしています。もちろんこの病気にかかっているネコさんのすべてが手術を受けられるわけではありません。でもノラさんのように甲状腺が大きくなりすぎると、喉が圧迫されて物が飲み込みにくくなったり、咳が出たり、心臓や肝臓が内服薬ではコントロールできなくなってしまいます。手術の後に嬉しそうにご飯を食べて幸せそうに暮らしている姿を見ると、私もとてもうれしいです。
今回は少しマニアックな話ですが、甲状腺機能亢進症で困っていらっしゃる方がいるのではないかと思ってこのページを書きました。お困りでしたらまず専門の先生にご相談ください。東京近郊でしたら松木先生が間違いないと思います。手術が必要かどうか、またお薬を変えたほうがいいかどうかなどのアドバイスがいただけます。